ベーシックインカム考 七方ふさがり一方あかり

ベーシックインカムという、まぶしすぎる“あかり”を、正面から見てみようではないか。

ロボットを使うと、仕事が減ってしまう??

 ベーシックインカムのことを考えていると、子どもの頃読んだ漫画(たぶん手塚治虫です)の一場面を良く思い出します。未来の世界でロボットがどんどん製造されて、労働者の仕事を奪っているというシーンです。労働者が「俺たちの仕事を奪うな」と言ってデモ行進している一方、理想に燃える若いロボット科学者が「ロボットが代わりに働いてくれるから、みんな仕事をしなくても生活ができるようになるのです」とロボットのことを擁護しているのです。

 この漫画に限らず、機械化が進むに連れて余暇が増えるはずだという予想をした人は過去に相当いるようです。「スローライフ入門」カール・オノレイ著 ソニーマガジンズからの孫引きですが、
・1956年にアメリカのニクソン大統領が、そう遠くない未来にやってくる週休3日性に備えるようにとアメリカ国民に言い渡したことがある。
・1966年には、アメリカ上院でアメリカ人の労働時間は2000年には14時間になっているだろう、という講演が行われた。
などなど、他にもいくつか紹介されています。皆さんも類似の話を聞かれたことがあるかもしれません。

 ところが実際は昔に比べて労働時間は増えているのではないでしょうか(一概には言えないですが)。少なくとも、「機械化が進んだ分だけ労働時間が減った」なんてことはないですよね。手塚治虫の漫画のように、機械に仕事を奪われたら、収入を得るため他の仕事を探さなければなりません。付加価値の高い仕事をできる人はそれでも何とかなります。しかしそうでない人は失業か、きわめて低い賃金でも仕方なく仕事をするワーキングプアになるのでしょう。そして、機械で代替できる仕事は、どんどん増えています。

 例えば、そうとう昔の話になりますが、駅の改札で「キンキンキンキン」と切符に鋏を入れていた駅員さんたちがいました。自動改札の導入で「仕事しなくても給料が入るようになった!!」とはなっていないはずです。

 機械化の流れはどんどん進みます。ところが機械化に伴って雇用が創出されるという法則、ルールはありませんので、普通に考えれば、社会が必要とする仕事の総量は減るのです。雇用創出なんて政策がありますが、あくまで政策でしかなく、うまくいく保障はありません。事実、先進国の失業率は決して低くありません。長いスパンで見ると、悪い方向にしか進まないような気がしませんか。

 そこで、所得を保証するという社会保障が必要になるのですが、そのひとつとしてベーシックインカムがあるということです。ベーシックインカムが他の失業保険などと比べてよい点は、、、長くなったので別の機会にまとめましょう。

ベーシックインカムで犯罪がなくなる??!

ベーシックインカムで犯罪、例えば廃棄物の不法投棄がなくなる??!

■なぜ不法投棄をするのか
 まず、なぜ不法投棄をするのかについて考えてみます。私は、不法投棄に関わるほとんどすべての人は、生きていくためやむを得ずやっているのだと思います。好きでやっているわけではないはずです。もちろん中には「一丁ぼろ儲けするために、不法投棄をやろう!!」という人もいるようですが。

■ベーシックインカムを導入すると
 ベーシックインカムが導入されると、すべての人に最低限の生活をするための収入が保証されます(銀行口座に振り込まれるでしょう)。そうすると、仕事がなくて困っているトラックの運転手さんだって、不法投棄の仕事は受けないはずです。処理業者の社長が「不法投棄をして来い」と従業員に指示をしても、その従業員は指示に従わないか、すぐに会社をやめるでしょう。
 つまり、収入や生活がある程度保証されているため、悪事を働く必要がなくなるのです。カネの呪縛から解かれてこそ、倫理観に基づいた行動が取れるのです。

 そうそう、あと泥棒も、強盗殺人も、サラ金も、借金苦による自殺者も激減するでしょう。そんな無理をしなくても、何とか生活できるのですから。いい世の中だと思うのですが、いかがでしょうか。

ベーシックインカムで環境配慮型のライフスタイルを

さて、ベーシックインカムは本当に環境配慮型のライフスタイルを推進するのでしょうか。

 私は「本当は誰もが環境に配慮した生活をしたいと思っているはず」と考えています。それができない理由として、「環境問題に対する認識が甘い、意識が低い」という点が挙げられますが、「?忙しくてやってられない」、「?金がかかる」という点も大きいと思います。

?忙しくてやってられない
 なぜ忙しいのでしょうか。人それぞれだと思いますが多くの場合、最近のキーワードを使うなら「ワークライフバランス」の問題だと思います。

 何かの本に、「職場の上司が『辞めれるもんなら辞めてみろ』という雰囲気で長時間労働を強いている」との証言が載っていたことを覚えています。もちろん、金の問題とは別に、周囲からの期待や職場の雰囲気から長時間労働をしてしまうこともあるかもしれません。しかし「失業したら大変だから、残業が多くても今の仕事にしがみついていたほうがよい」という理由がかなり大きいと思います。
 リストラ後の就職難に途方にくれる中高年、若年層の失業問題は「失業したらヤバイ」という恐怖感を我々に与えています。

 もしベーシックインカムを導入すれば、最悪解雇されても大丈夫という安心感から、労働者と企業がいまより対等に話し合いができるようになるはずです。結果として人材の流動性が高まるはずです。これは労働条件の悪い会社にとっては困ったことですが、労働条件がよい、やりがいのある仕事を提供している会社にとってはよい話です。よい会社には今以上によい人材が集まってくるでしょうから。
 その結果、長時間労働を拒否しやすくなり、ワークライフバランスが改善されるはずです。そうすれば自ずからスローライフ、NPOや地域社会での活動、ボランティアなどへの参加=環境配慮型のファイルスタイルが推進されるはずです。

?金がかかる
 ワーキングプアといわれる方々や生活保護を受けている方々に、「海外から長距離輸送されてくる農作物は安くても環境負荷が高いから買うのをやめましょう、変わりに国産の無農薬野菜を買いましょう」とはとてもいえません。
 ベーシックインカムを導入すれば(給付水準にもよりますが)、経済的不安からある程度解放されます。社会全体の雰囲気も変わってくるのではないでしょうか。そうすれば、環境にやさしい商品なら少々高くてもいいか、と思える方が増えると思います。


 もちろん、「環境にきちんと配慮するとコストが上がる」という社会の仕組みに問題があるのですが、いわゆる環境コストの内部化についてはまた別の機会にでも取り上げましょう。そういえば、環境税の議論が本格化してきましたね。

環境配慮型ライフスタイル 〜ベーシックインカムと環境問題〜

環境問題を解決するためには、技術革新や法規制、企業の努力だけではなく、個人のライフスタイルの変革やNPO・NGOなどの民間団体の活動を活発化させることが重要とされています。

■環境基本計画
例えば、環境基本計画では国民に対して
『大量消費・大量廃棄型の生活様式の変革(住宅の断熱化、省エネルギー機器や燃費性能の優れた自動車への買換え、公共交通機関や自転車の利用促進、地域材の積極的利用等)』
『リサイクル運動、森林づくり・都市緑化などの緑化運動等の温暖化対策活動への積極的な参加』
民間団体に対して
『個々の国民、事業者等の連携の結節点として、幅広い温暖化対策活動を自律的、組織的に実施』
『専門的能力をいかし、各主体の温暖化対策・施策に関する提言、国民等への情報提供』
をすることが期待されています。

■循環基本計画
また、循環型社会形成推進基本計画では、循環型社会形成の中長期的なイメージとして
『市民やNGO/NPO 等が参加したリサイクル活動が行われ、その活動が広がってコミュニティ・ビジネスの展開が進みます。』
であったり、
『仕事と生活の調和(ワーク・ライフ・バランス)が推進され、「仕事の充実」と「仕事以外の生活の充実」の好循環がもたらされ、「仕事」以外の時間では家庭や地域コミュニティにおいて、環境ボランティア活動などが活発に行われます。』
といわれています。

また、関係主体のパートナーシップについて
『地域での住民・NGO/NPO 等・事業者・行政のパートナーシップに基づく、様々な関係主体が一体となった循環型社会づくりの取組が進み、さらに、意識・行動の変革を加速するとともに、地域の活性化にも結び付いていきます。』
とされています。

こんなところで十分でしょう。このような話があちこちにあります。

■課題
このような方向性には賛成ですが、推進に向けての施策にはなにがあるのでしょうか。私の理解では、環境教育、各種キャンペーンなど、つまり「皆さん意識を変えて頑張らなくてはいけませんよー」という呼びかけをする程度との認識です。

しかし、ライフスタイルの変革や民間団体の活動の活発化とは、金銭的収入を伴わない(または少ない)、自主的な活動であるといえるでしょう。つまり、国民や民間団体が環境問題に対する意識を変化させるだけでなく、金銭的、時間的余裕があることが必要であると考えられます。

ところが、非正規雇用やワーキングプアの増加の問題、ワークライフバランスの問題が取りざたされている現状では、国民全体に金銭的、時間的な余裕があるとは言いがたい状況です。今後の見込みとしても、経済のグローバル化が進む中で人件費圧縮と長時間労働の傾向は、そう簡単に改善されそうにありません。これでは、環境に配慮したライフスタイルの変革や、国民が民間団体の活動に積極的に参加するという計画は、絵に描いた餅に終わってしまう懸念があります。

そう、結局、ライフスタイルの問題なのです。

■ベーシックインカム
私は、ライフスタイルを変革できる政策として、ベーシックインカムが非常に有効ではないかと考えています。環境問題どころか、我々の社会が抱えている多くの問題をよい方向に転換できるものと期待しています。

ワーキングプアとベーシックインカム

■所得と労働の分離
 ベーシックインカムは、所得と労働の分離にその本質があると言われています。労働をしなくても、所得が保障されるので、確かにそのとおりですね。このことが、社会にとって何を意味しているかというと、、、

■ワーキングプアの発生メカニズム
 我々は生きていくためには必ず所得が必要です。自給自足でない限り、所得がなかったら生活できませんから。しかしこの“所得”は非常に不安定な市場である「労働市場」に直結しています。
 この不安定な労働市場にしがみつかなければならない、というところに無理が生じているのです。特に社会が成熟し、日に日に機械化、自動化が進んでいくことで、社会が労働を必要としなくなってきている中では、大変な不都合が生じます。働き口が少ないのに、働きたい人がいる、そのような中で「給料が少なくてもいいから」ということ低賃金で働くワーキングプアが出てきてしまうのです。

■経済成長が必要であるという迷信
 実は、我々の社会は、根拠のない迷信に取り付かれているといえるでしょう。それは、労働人口と同じだけの労働を社会は常に必要としている(もしくは、それだけの労働を必要とする仕事を作り出さなければならない)、というものです。これを当然の前提として政策を運営する(=公共投資や経済成長で雇用を創出しようとする)から、無理が生じるのではないでしょうか。

■必要な「所得」を不安定な「労働」から得る、というのはナンセンスなのです
 だからまずは、絶対に必要な「所得」と、なくなってしまうこともある「労働」をある程度まで切り離そう、という考え方です。そうすれば、ワーキングプアの問題をかなり改善できるはずです。

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MH

Author:MH
株式会社アミタ持続可能経済研究所という環境コンサルティング企業に勤務。特に廃棄物問題についてコンプライアンス、適正処理・管理についてセミナーやコンサルティングを行っている。既に議論de廃棄物というブログを運営している。
ベーシックインカムについては、「環境問題を解決するために重要なツールとなる」という考えから興味を持つことになり、別途このブログを持つこととなる。


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